オンプレミス→クラウド移行の5つ手順とメリットとデメリットを解説

クラウド移行とは?オンプレミスとの違いやメリット_移行手順の解説

「クラウド移行」とは、企業のソフトウェアやデータなどのデジタル資産を、自社サーバーからクラウドへ移行することです。自社保有のサーバー(オンプレミス)から、クラウドへ各種システムを移行することで、それらの運用コスト・メンテナンス等の工数削減や業務効率の向上などのメリットが得られます。
しかし、特にデータベースのクラウド移行となると莫大な工数と高度な技術が必要だと感じてしまうため、なかなか踏み出せないこともあるかもしれません。

そこで今回は、クラウドとオンプレミスの違いを比較し、クラウド移行によってどのようなメリットが得られるのか、具体的な移行手順や導入事例も交えて詳しく解説していきます。オンプレミスからクラウドへの移行を検討されている方々の参考になりますと幸いです。

目次

1 クラウド移行とは?

クラウド移行とは?

今回の記事で解説する「クラウド移行」とは、企業が保有する「デジタル資産」(特にサーバー)を、オンプレミスからクラウドへ移行することを指します。

オンプレミスとクラウドの大きな違いは、デジタル資産の「保管場所」です。オンプレミスでは自社で保有・運用するサーバーへデータやシステム(ソフトウェア)を保管するのに対し、クラウドではベンダー(専門の事業者)が管理するデータセンターにあるサーバーでそれらを運用します。クラウドへ移行する大きなメリットは、ITシステムの運用保守をクラウド専業ベンダー任せにすることで、自社の工数、コストを減らし業務効率を上げることにあります。

これらの点を踏まえて、まずはクラウドとオンプレミスの定義や違いについて、整理しておきましょう。

1.1 オンプレミスとは?定義や特徴を解説

オンプレミスとは、「自社保有のサーバーおよびシステム」を指します。オンプレミスの特徴は、システムの構築や運用・管理すべてが社内で完結することです。自社で運用するサーバーにITシステムを構築し、保有するソフトウェアやデータを自社施設(もしくはデータセンター)に保管します。
自社でITシステムを運用するため、導入目的や課題に合わせてハードウェアやソフトウェアをカスタマイズし、データベース処理やAI開発・ディープラーニングに特化したサーバー構築をするなど、さまざまな機能を自由に作り込めるのが大きなメリット。一方で、サーバーやネットワーク構築に専門的な知識や高額なイニシャルコストがかかり、それらを維持するためのランニングコスト・工数も必要となることがデメリットになります。

これまでオンプレミスは一般的な運用形態でしたが、クラウドが普及するにつれて、そちらへ運用をシフトしていく企業が増えてきています。

1.2 クラウドとは?定義や特徴を解説

「クラウド(クラウドコンピューティング)」とは、専門のクラウド事業者(ベンダー)が運用するサーバー上に、自社が使用するITシステムを構築することを指します。

サーバーやネットワーク環境を自社で構築する必要がないため、イニシャルコストが少なく手軽に導入できることが大きな魅力です。一方で、カスタマイズ性はオンプレミスと比べるとかなり控えめ。
クラウド移行とは、「ITシステムやデータの保管場所を、自社から専門業者へ移すこと」とイメージすると分かりやすいでしょう。ただし、一部のITシステムやデータを自社のオンプレミスサーバーに残す、「ハイブリッドクラウド」を採用する企業も少なくありません。

これは、企業が保有するIT資産が、必ずしもすべてクラウド移行できるわけではないからです。情報の機密性や高速通信を追求するとオンプレミスとなりますので、オンプレミス(プライベートクラウド)とクラウド(パブリッククラウド)を融合したハイブリッドクラウドを選ぶことで、お互いの持つ良いところを共存させることができます。

2 クラウドとオンプレミスとの違いを比較

クラウドとオンプレミスとの違いを比較

クラウドとオンプレミスの定義を確認したところで、以下の6つの観点から両者の違いをさらに詳しく見ていきましょう。

・イニシャルコスト(初期導入費)を比較
・ランニングコスト(維持管理費)を比較
・導入スピードや運用難易度を比較
・カスタマイズ性を比較
・セキュリティ強度を比較
・災害や障害発生時の対応を比較

2.1 イニシャルコスト(初期導入費)を比較

イニシャルコスト(初期導入費)はクラウドが圧倒的に有利です。オンプレミスの場合は、サーバーやネットワーク機器などの設備を構築するために、高額なコストがかかります。一方、クラウドはベンダーが運用する施設・設備を利用するため、初期の導入コストが安価になります。

また、クラウドはシステム構成に無駄が生じにくいです。オンプレミスの場合は、例えば「最大10TB」などの想定値でサーバーを構築しますが、10TBの容量に達するまで空き容量が無駄になります。クラウドでは必要最小限の容量からスタートして、段階的に必要となる容量分を追加契約していくことができるので、特にバックアップに代表される、常にデータが増えていくシステムのコスト面でとても有利になります。

2.2 ランニングコスト(維持管理費)を比較

ランニングコストは、オンプレミスが有利となります。先に述べたイニシャルコスト(初期導入費用)で、保守契約を含めた支払いのほとんどが完了しているため、それ以降ランニングコスト(月額利用料)の支払いは発生しません。(利用しているソフトウェアがサブスクリプションのものであれば、その支払いは発生します。)
一方、クラウドは利用し続ける限り、月額利用料の支払いが必要となります。

また、クラウドの利用期間によっては、オンプレミスを購入するよりも高額になってしまうこともしばしばあるので、どの程度の期間、どの程度のシステムを利用するのか、事前に金額のシミュレーションをしておくとよいでしょう。

2.3 導入スピードや運用難易度を比較

導入スピードや運用難易度については、クラウドが圧倒的に有利です。オンプレミスは社内でサーバーを構築するため、サーバーが自社に到着するまでの時間がかかります。さらに、運用を始めるまでにさまざまな設定を行う必要があり、専門のエンジニアでなければ対応できないなど難易度も高いです。

一方クラウドの場合は、クラウド専業ベンダーを利用することで、環境設定やある程度の運用管理を任せることができます。自社側は基本的にIDやパスワードの設定・ログインを行うだけでシステムを利用できるようになります。具体的には、オンプレミスは導入までに数カ月かかりますが、クラウドなら最短で数日~1週間で導入できることもあります。
なお、すべての初期設定・運用をクラウド専業ベンダーに任せられるわけではありません。データベースのクラウド移行であれば、弊社での実績が多数ございます。データ移行の計画からクラウド運用開始後の初期サポートまで、しっかりお客様に寄り添ってまいりますので、ぜひお声がけください。

2.4 カスタマイズ性を比較

カスタマイズ性については、オンプレミスが圧倒的に有利です。自社サーバーで運用するので、ITシステムを自社に最適な形で自由にカスタマイズできます。例えば、自社独自の機能を搭載したり、先に述べたとおり特定の用途に特化したシステム構築をしたり、積極的に最新技術を取り入れたりするなどです。

一方、クラウドはシステムのカスタマイズ性が限定されます。ベンダーのサーバーで運用するという性質上、提供されているサービスの範囲内で機能を追加・変更することになります。しかし、近年では拡張機能やオプションが充実したクラウドサービスも増えてきています。

2.5 セキュリティ強度を比較

システムのセキュリティ強度は、セキュリティ知識・技術があるかに依存します。基本的にオンプレミスは、社内完結するネットワーク上で運用できるので、セキュリティ強度は高くなります。しかし、専門知識がある担当者が適切なセキュリティ対策を行わなければ、システムは脆弱になります。最近よく聞く「ゼロトラスト」がこれです。

一方、クラウド移行の場合、セキュリティ強度は、ベンダーの体制に依存します。近年ではセキュリティへの関心が高まっているため、高度なセキュリティ対策を整備しているベンダーがほとんどです。それに加えて、自社側(クラウド利用者側)で、アクセス端末の二段階認証を施すなど、更にセキュリティ強度を高めることも必要となるでしょう。

2.6 災害や障害発生時の対応を比較

災害や障害発生時の対応は、クラウドの方が安心できます。オンプレミスはサーバーを自社で運用するため、非常時の対応も社内で行う必要があります。サーバー障害が発生すると企業にとって甚大な被害となるため、DR(ディザスタリカバリ/災害復旧)やバックアップの設備も独自に用意しなければなりません。また、どこにDRサイトを置くのか、というところも検討が必要になります。
特にデータベースにおいては、「冗長化」や「バックアップ」が必要となることが多いので、この点が課題となることが多いです。

一方クラウドの場合は、データセンター(もしくはサーバー)が、そもそも複数の場所に分散して設置されているため、DRサイトの選定で悩むことは少ないです。トラブルが起きても他の地域のサーバーで代用できる「DRサービス」等に加入していれば、障害発生時のデータ復旧などの対応も、ベンダー側で対応することもできるので安心です。また、オプションサービスとして24時間サポート体制を提供しているので、トラブル発生時も迅速な対応が行なえます。

3 オンプレミス環境からクラウドに移行するメリット

オンプレミス環境からクラウドに移行するメリット

続いて、オンプレミス環境からクラウドに移行するメリットについて、以下の6つの観点から解説します。

・自社の運用コストや負荷を軽減できる
・システムを簡単に拡張できる
・すぐに使えるようになるので導入のハードルが低い
・社外からアクセスできるのでリモートワークに向いている
・ITインフラが物理的に老朽化する心配がない
・緊急時の対応をクラウド専業ベンダーに委任できる

3.1 自社の運用コストや負荷を軽減できる

クラウド移行すると、運用にかかる人的コストと負荷を大幅に軽減できます。オンプレミスのシステムは自社で運用するため、サーバーやネットワーク機器のメンテナンスなどで、担当者に相当の業務負荷がかかるものです。専門のエンジニアを常駐させる場合は、コストも増大します。

一方、クラウドの場合は、サーバーやシステムの運用・メンテナンスを行うのはベンダーなので、自社で細やかな管理をする必要がありません。さらに、システムの安定性やセキュリティ強度の確保、システムの更新・アップデートもベンダーが行うので、業務負荷やコストの違いは明らかです。

また、クラウドサービスの多くは利用量に応じた「従量課金制」なので、必要以上に費用がかかりにくくなります。これらの点から、大企業だけではなくITシステムの管理に人数を割けない中小企業にとっても、クラウドは非常に魅力的なサービスだといえるでしょう。

3.2 システムを簡単に拡張できる

Webサービスのリッチコンテンツ化やユーザー数の拡大などを要因とするトラフィック増加により、企業のデータベースにはあらゆるデータが日々蓄積されていくため、CPUコア数やメモリ・ストレージ容量の拡張が必要となることがあります。
オンプレミスの場合、数年先の「最大量」を想定したシステム(サーバー)を構築しますが、それをオーバーした場合は高額なコストと時間をかけてリブレイス(サーバー/システムの買い替え)もしくは、拡張をしなくてはなりません。
一方、クラウドの場合は、ベンダーから「必要量」を追加契約するだけですぐに拡張して使えます。

ストレージを拡張する必要がある場合は、追加料金を支払うだけ。逆に縮小したい場合はそれだけ月額料金が安くなります。余分なシステム費用が発生しづらいことは、コスト面でも大きな魅力です。
また、システムの冗長を施していれば、システム拡張時のダウンタイムを抑えることもできます。

3.3 すぐに使えるようになるので導入のハードルが低い

クラウドサービスは短期間で導入できることも大きなメリットです。オンプレミスの場合は、自社でサーバー調達・構築を行う必要があるため、導入までに数カ月かかることも珍しくありません。クラウドはすでにベンダー側が整備している環境を利用するため、利用契約とアカウント登録を済ませば、すぐ使えるようになります。

スピードが重視されるようなビジネスシーンの場合、利用開始までに数カ月かかるオンプレミスのシステムでは、経営上不利になることがあるかもしれません。短期間でスピーディーに導入できるクラウドはそういった点からもメリットがあります。

3.4 社外からアクセスできるのでリモートワークに向いている

クラウドサービスはパブリックなネットワークからアクセスできるので、利便性が高く、リモートワークとの親和性も高いです。オンプレミスのサーバーは社内ネットワークで運用するため、基本的には社内の端末でなければ接続できません。そのため、リモートワーク時にシステムを使用できない、もしくは、かなりの手順を踏んでアクセスする必要があるので、業務において煩雑・不便になることがあります。

先に述べましたとおり、クラウドは基本的にパブリックなインターネット経由で接続されるため、IDとパスワードさえあれば社外のパソコンやスマートフォンからでもアクセスできます。リモートワークや出張時もシステムにアクセスでき、データ共有もスムーズに行えるため、業務効率の改善に大きな効果があるでしょう。

もちろん、不正アクセスを防ぐためのセキュリティ対策もしっかり施した上で、安全性と利便性を両立させましょう。

3.5 ITインフラが物理的に老朽化する心配がない

オンプレミスからクラウドに移行すると、サーバーやネットワークスイッチの物理的な老朽化に対する心配がなくなります。オンプレミスは、定期的なメンテナンス・リプレイスなど老朽化の対策が必要です。

クラウドの場合、これらの機器はすべてベンダーの保有となるため、老朽化対策もベンダーが行います。クラウドへの移行により、システムを利用することだけに集中でき、重要な業務に時間を費やせるようになることは大きなメリットです。

3.6 緊急時の対応をクラウド専業ベンダーに委任できる

業務システムは企業活動の根幹を担うものなので、障害が発生した場合は企業に甚大な損害が生じることがあります。そのため、24時間365日の障害対応サポートを業務委託することがほとんどです。

オンプレミスの場合は、障害対応のために委託先作業員のデータセンターへの入館申請や作業立会、場合によってはシステムシャットダウンの実行などを、自社人員で行う必要があります。
一方、クラウドは障害発生時の対応は契約している専業ベンダーが行いますので、トラブル解決のために自社の工数とコストを割く必要がありません。

4 オンプレミス環境からクラウドに移行するデメリットや注意点

オンプレミス環境からクラウドに移行するデメリットや注意点

続いて、オンプレミス環境からクラウドに移行するデメリットや注意点について、以下の4つの観点から解説します。

・既存システム同士の連携性が低下する可能性がある
・カスタマイズ性はオンプレミスと比べると控えめ
・セキュリティ強度はベンダーの体制に依存する
・データベースを移行する難易度が高い

4.1 既存システム同士の連携性が低下する可能性がある

オンプレミスからクラウドに移行すると、システム同士の連携性に課題が生じる可能性があります。例えば、これまで複数のITシステムをオンプレミスで連携させていた場合、クラウド移行により一部の連携がうまくいかなくなることもあります。これは、クラウド移行によって、これまで使ってきたソフトウェアバージョンから、意図しないバージョンへのアップデートが必要になるなど、システムの操作性や機能が変わることに原因があります。

しかし、連携性の問題はクラウド移行の手法を検討することで、解決できるケースがあります。例えば「ハイブリッドクラウド」でクラウドとオンプレミスを共存させ、システム同士の連携性を維持するといった方法が挙げられます。

4.2 カスタマイズ性はオンプレミスと比べると控えめ

クラウドはオンプレミスと比べるとカスタマイズ性が低いため、自由な機能選択ができるかどうかは、ベンダーが保有する環境内での拡張機能やオプション次第です。この観点からいえばクラウドの利用は、ITシステムを「構築」するのではなく、「選択」すると考えておくといいでしょう。

ただ、「クラウドはカスタマイズ性が低い」というのも過去の話になりつつあります。ビジネスの多様化が進んでいる現在では、クラウド事業者もさまざまな方法でカスタマイズ性を高めて提供し始めており、企業の目的や課題に合わせたシステムを導入しやすくなっています。

4.3 セキュリティ強度はベンダーの体制に依存する

クラウドシステムはベンダーのサーバー上で稼働するため、セキュリティ強度はベンダーの体制に依存します。一般的にクラウドはパブリックなネットワークで接続されているため、社内で完結するオンプレミスと比べるとセキュリティ強度が低いといわれています。

クラウドシステムは社外の端末でもアクセスできるので、サイバー攻撃や情報漏洩などのリスクも心配されるでしょう。しかし、現在のクラウドサービスは徹底的なセキュリティ対策が施されている場合がほとんどです。例えば、不正アクセスやデータ改ざんの検知、アクセス権限の設定など、セキュリティレベルを高めるさまざまな機能が搭載されています。
また、自社側でクラウドにアクセスする端末に二重認証をかけるなどで、セキュリティレベルを上げることもできます。

4.4 データベースを移行する難易度が高い

クラウドには「データベース移行の難易度が高い」というデメリットもあります。オンプレミスで保管しているデータベースをクラウドへ移行するとき、システム自体が変わることによるSQL不整合や、移行作業時のミスでデータが失われるリスクがあります。企業の大切な資産である「情報」が失われることは重大な問題です。

銀行のような「システムを止められない」現場でデータベース移行を行う場合は、技術的な課題が大きいため、移行難易度がさらに高くなります。このようなケースに対応できるクラウド事業者は少ないのが現状です。システムのクラウド移行を請け負う有名企業でも、データベース移行は我々のような専門知識を持つ業者に委託していることもあるほどです。

また、オンプレミスからクラウドへ移行する際は、同一ではなくバージョン違いや異種データベースへのシステム移行も含まれる場合が多くあります。
その点、我々インサイトテクノロジーであれば、豊富なデータベース移行実績がございますので、企業の大切な情報を安心してクラウドへ移行することができます。まずはお気軽にご相談ください。

5 クラウド移行に向いているのはどんな企業?

クラウド移行に向いているのはどんな企業?

これまで解説してきたように、クラウド移行には、運用コストや運用負荷の軽減、利便性向上などのメリットがあります。しかし、クラウド移行に向いている企業が多い一方で、オンプレミス環境のほうが向いているケースもあります。

ここからは、どのような企業がクラウド移行に向いているかを見ていきましょう。

5.1 クラウドへの移行がおすすめな企業

クラウドへの移行がおすすめな企業は、以下のいずれかに当てはまる場合です。

・運用コストや負荷を抑えたい
・用途に合わせて、システムを柔軟に変更したい

クラウドサービスは、基本的に初期費用や自社サーバーの運用が不要です。ITインフラを管理・メンテナンスするための自社人件費がかからないため、導入コストだけではなく、運用コストや負荷も軽減できます。そのため「コストを抑えたい企業」こそクラウド移行がおすすめです。

また、クラウドは必要なシステム要件で契約するため、いつでもCPUコア数やメモリ・ストレージ容量の増減ができます。
さらに、クラウドは社内の端末だけではなく、インターネット環境があればパソコンやスマートフォンなど、さまざまな端末からアクセスできることもポイント。リモートワークとの親和性も高いため、新たな働き方を推進したい企業にも向いています。

5.2 クラウドへの移行がおすすめでない企業

以下のいずれかに当てはまる場合は、クラウド移行が向いていない可能性が高いです。

・機能を自由にカスタマイズしたい
・既存システムをクラウドで連携できない?

クラウドサービスは、カスタマイズ性に限界があるため、自社に最適化したシステムを導入したい場合には、あまり適していません。また、自社の既存システムと連携できなくなる可能性もあるため、これまでと同じ使用感・操作感を維持したい場合も注意が必要です。

6 オンプレミスからクラウド環境への移行手順

オンプレミスからクラウド環境への移行手順

ここからは、オンプレミスからクラウド環境へ移行する手順について、以下の5つのステップに分けて解説します。

1.課題把握と目標設定
2.情報整理と事前調査
3.クラウド移行計画の作成
4.作業内容と連絡体制をまとめる
5.システム移行と最終的な動作確認

6.1 課題把握と目標設定

クラウド移行にあたり、まずは課題把握と目標設定を行うことが重要です。クラウド移行は企業にとって非常に大きな変化となるため、社内にはさまざまな意見もあり、場合によっては反対意見もあるかもしれません。

社内全体で意識を共有し、クラウド移行を成功させるために、以下の3つのポイントを慎重に検討しましょう。

・なぜクラウド移行するのか
・何をクラウド移行するのか
・いつまでにクラウド移行するのか

多くの場合、企業が抱えている「課題」を解決するために行います。例えば、「ITシステムにかかるコストや工数を削減したい」「業務効率を向上させたい」などです。課題を整理しておくことで、これら3つのポイントも設定しやすくなるでしょう。

6.2 情報整理と事前調査

クラウド移行の目標を設定できた後は、情報整理と事前調査を行います。

クラウドへ移行させるソフトウェアやデータなどのIT資産を把握し、その上で要件に適合するサービスを選定します。例えば、データベースシステムをクラウド移行させるのであれば、自社が求めるパフォーマンスを移行後に発揮できるか、これまで通り既存システムと連携できるかを確認しましょう。本番移行する前に、検証として数ヶ月テストを行うことも必要かもしれません。こういった環境を即座に構築でき、目的が済めば契約終了するだけで済むクラウドの利便性は高いと言えるでしょう。

また、オンプレミス環境と共存できるかという点も重要です。 入念な事前調査なしでクラウド移行の計画を立てるのは、トラブルの原因になります。クラウド移行を成功させるために、移行後の業務風景までイメージしながら情報を整理しましょう。

6.3 クラウド移行計画の作成

事前調査が完了したら、クラウド移行計画を作成します。重要なポイントは「移行順序」と「スケジュール設定」です。

複数のシステムをクラウド移行する場合の優先順位は「業務課題」「影響度」「利用者数」などの観点で評価します。基本的には、影響度や利用者数が少ないシステムから移行するのがおすすめです。「先行事例」を得ることができ、より規模の大きなシステムの移行に知見を活かすことができます。

スケジュール設定は、クラウド移行を効率的に進めるために欠かせません。全体の見通しを立てやすくするためにマイルストーンの設定をしておくと、作業の進捗状況の確認がしやすくなるため、トラブルが起きても体制を立て直しやすくなります。

6.4 作業内容と連絡体制をまとめる

具体的な移行計画を策定した後は、作業内容と連絡体制をまとめます。

クラウド移行にはさまざまなタスクが発生します。「誰がどのタスクを担当するか」を明確にしておき、トラブル発生時に対応するための追加要員も確保しておくと、万一のときも迅速に対応できるでしょう。

必要な情報を事前にリストアップしておくことで、全体のタスクを効率的に進め、作業の進捗状況を共有しやすくなります。

6.5 システム移行と最終的な動作確認

1から4のステップが完了したら、クラウド移行を行う体制が整います。計画に従い、作業担当者がそれぞれのタスクを進行し、連絡を取り合って進捗状況を共有しましょう。

また、移行作業に問題が起きたときは、移行を中止して元の状態を復帰させる「切り戻し」が必要なことがあります。切り戻しの判断が遅れると影響が大きくなるため、作業前に改めて連絡体制と判断ポイントを確認しておくことが重要です。

作業完了後は最終的な動作確認を行います。システムが要件を満たしているか、事前の想定通りの性能や連携性を発揮できているかを確認し、問題なければクラウド移行の完了です。

7 クラウド移行に失敗しないために重要な3つの対策

クラウド移行に失敗しないために重要な3つの対策

最後に、クラウド移行に失敗しないために重要な、以下の3つの対策をご紹介します。

・社員(利用者)にクラウド移行の目的を伝える
・導入前に月額料金や必要経費を精査する
・自社環境に合うクラウドシステムの構築を意識する

7.1 社員(利用者)にクラウド移行の目的を伝える

クラウド移行の目的を社員(利用者)と共有せずに進めると、せっかく導入したクラウドシステムを上手に活用できないことがあります。

新しいシステムを導入したときは、システムの操作性に慣れるまでは業務効率が低下するため、現場には少なからず混乱や不満が生じます。システムの導入目的やメリットが不明瞭な場合は、社員の士気が低下するかもしれません。そのため、「なぜクラウド移行するのか」「クラウド移行によってどんなメリットがあるのか」を、事前共有しておくことが重要です。

クラウドを使いこなすための社員教育・トレーニング期間を設けておくと、移行後の混乱を最小限に抑えられるので、社員の士気・業務効率ともに向上させやすくなるでしょう。事前の情報共有は、クラウド移行を成功させるために欠かせません。

7.2 導入前に月額料金や必要経費を精査する

クラウドへ移行する前に、コストを精査しておくことが重要です。クラウドシステムの必要経費は基本的に月額料金で決まります。ほとんどのクラウドシステムは従量課金制で、使った分だけ料金を支払うシステムとなっており、コストの透明性は高いといえます。

しかし、事前の想定と実態が異なっている場合は、思ったよりコストが増大することがあるので要注意。

クラウドでは柔軟にシステム仕様を変更できますが、運用コストを最適化するには事前の設計や検証が重要です。特に、データベースを構築する場合、クラウド環境の設計がその実行速度や保存できるデータの量に影響します。運用時に想定外のコストが発生しないよう、設計時にデータベースのアセスメント・コンサルティングを行うことをおすすめします。

7.3 自社環境に合うクラウドシステムの構築を意識する

クラウド環境が自社とマッチしていなければ、業務効率が低下する恐れがあります。オンプレミスからクラウドへの移行を無秩序に行うと、クラウドシステム同士の連携が困難になることも。また、自社で使わない機能が多過ぎたり操作性が低かったりすると、現場で使いこなせないかもしれません。

そのため、クラウド移行をするときは「自社環境と適合するか」を意識して、システム選定を行うことが大切です。社内で検討を重ねることはもちろん、クラウド事業者と入念な打ち合わせを重ねることで、最大限のパフォーマンスを発揮できるクラウド環境を構築できます。
複数のクラウドを組み合わせた「マルチクラウド」の構築、という選択肢もあるかもしれません。

8 自社の課題に合わせてクラウド移行を検討しましょう

自社の課題に合わせてクラウド移行を検討しましょう

オンプレミスからクラウドへの移行は、運用コストや負荷の軽減はもちろん、業務効率化や生産性向上といったメリットをもたらします。また、柔軟なシステム構築によりビジネスのスピード感が増し、テレワークなど働き方の多様性が広がる今の時代に最適なシステムです。

データベースシステムのクラウド移行をご検討される際は、ぜひインサイトテクノロジーまでご相談ください。弊社では、クラウド移行前の相談から移行後のサポートまでワンストップで提供し、トラブル発生時にも迅速な対応ができます。

データベース移行には「データレプリケーションツール Qlik Replicate」を活用し、異種データベース間を含む、さまざまな組み合わせで移行が可能です。

また、「データマスキング Insight Data Masking」を使うことで、クラウドにセキュアな状態で、実データを元にした検証環境を作ることもできます。

Qlik Replicateとの連携でデータ同期の自動化を実現し、個人情報のデータマスキング(不規則文字への自動変換/匿名化)ができるため、情報の漏洩を抑えつつ複数拠点のデータをリアルタイムで移行できます。本番環境のデータを安全に連携できるので、移行時の検証環境はもちろん、安全なデータ分析環境の構築にも対応できます。
クラウドへのデータベース移行の大きな課題として、SQL互換の確認と修正工数の見積もりがあります。この問題を解決する「Insight Database Testing」を利用すれば、クラウドへの移行前・後のデータベースバージョンアップ時のSQL修正コストを削減し、スムーズな移行・運用が行えます。また、クラウド環境では、ユーザー側が意図しないシステムアップデートもあるので、こういった際にも事前準備としてご利用いただくことができます。

適切なクラウド移行を実現するため、導入前のご相談から運用開始後のサポートまで、各種サービスのご用意もございます。
クラウドに限らず、オンプレミスでのデータベース移行や運用についてのご相談なども含めまして、私どもインサイトテクノロジーへ、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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