2024年最後の記事となります。2024年はどのような年だったでしょうか?IT業界に籍を置く私はもちろん、技術者でない方にとっても「生成AI」が大きな話題だったのは間違いないでしょう。
先日、以前メルトダウン事故があった米スリーマイル島の原子力発電所が再稼働するとのニュースを見ました。再稼働するのは事故の影響がなかった1号機のみで、そこで発電した全電力を、今後20年に渡りマイクロソフト社に供給するそうです。グーグル社も電力会社などと提携し、米国内で再生可能エネルギーの発電所の建設計画に参画すると発表しました。生成AI(人工知能)の開発や動作に使うデータセンターには大量の電力が必要で、テクノロジー企業はその調達に迫られています。
皆さんもご存じのように、大規模言語モデルを使用した生成AIは、モデルのパラメータ数を増やすことでその性能が向上します。OpenAIのGPT-2((2019年))ではパラメータ数は15億、GPT-3(2020年)ではパラメータ数は1750億、現在のGPT-4(2023年)のパラーメータ数は非公開ですが、5000億から1兆を超えると言われています。GPT-2からGPT-4までのたった4年の間に、パラメータ数は300倍から700倍になったことになります。これに伴って消費電力が大きな問題となっており、大手テクノロジー企業も自ら電力の調達をし始めているということです。
GPT-3時代(2020年)のCPUの消費電力は200WでGPUは300Wでしたが、GPT-4oになった2024年では、CPUは500W、GPUは1000Wを超えると言われています。AIの進化がエネルギー需要に大きな影響を与え、地球温暖化にも関係してくると単純に喜んでばかりいられませんね。
それでもAI開発企業もただ電力消費が増えるに任せているだけではありません。例えば、AIに適したGPUの開発により省電力化を図っています。このGPUを使用することで、CPUのみで処理した場合と比較してエネルギー効率が42倍になり、年間約140万世帯分のエネルギー消費量が削減できるそうです。
似たような事例として、照明器具の事例が挙げられます。白熱電球からLEDに置き換わってきたことはまだ記憶に新しいところですよね。実は白熱電球のエネルギー変換効率は低く、2.3%〜2.6%が発光に使われるのみで残りは発熱に使われてしまっているそうです。確かに、点灯中の白熱電球は触れないほど熱いものも多かったように思います。LEDの場合は発光に使われるのが15%〜25%とのことですから、10倍近く変換効率が良くなっています。これは大きな変化ですね。
CPUやGPUでも同様に低消費電力化の研究が進められているとのことなので、今後スマートフォンレベルでも高精度のAIが稼働できる日がくることを楽しみにしたいと思います。
それでは、良いお年をお迎えください。