優先すべきは標準化?差別化?

4月3日に発生した江崎グリコのシステム障害に解消の目途が立ち、8月から順次一部製品の出荷ができるようになるそうです。私はグリコのカフェオレが大好きで、こうなる前は週に1度は購入していました。それが、カフェオレだけでなくプッチンプリンまでもがコンビニから姿を消してもう4ヶ月以上。こんなに長い期間に渡って入手できなくなるとは思いもしませんでした。

きっかけは、調達や出荷、会計などを担っている統合基幹システム(ERP)の切り替えに失敗したことでした。在庫管理システム上の在庫数と実際の在庫数が一致しなくなってしまい、出荷を停止したそうです。この基幹システムの停止による売上への影響は、約150億円と発表されています。

そもそもの障害発生の原因はまだ発表されていませんが、IT業界にとっては大きな影響がある出来事です。今後も続報を注視していきたいと思います。

さて、今回のニュースでも話題になった「ERP」についてはご存じでしょうか。「Enterprise Resources Planning」の頭文字をとった略称で、企業の資源(リソース)を計画的に管理し、最適化するための手法を指しています。そこから転じて、企業のさまざまな業務プロセスを統合・管理するためのシステム=統合基幹システムそのものを指すことが多くなりました。

ERPパッケージソフトとしては、独SAP社や米Oracle社のものが有名です。ERPシステムは海外製品なので、日本の商習慣に合わない部分が多くあります。そのため、日本ではERPパッケージをそのまま使用する会社は少ないと思います。日本の会社では、「パッケージソフトの自社に合わない部分は、アドオン(追加開発)ソフトを開発して業務に合わせればいい」という考えを多くの人が持っています。実際、私も前職でERPシステムの大規模なアドオン開発を経験しました。

そもそもERPパッケージは、グローバル企業における経営の最適化を目的としたソフトウェアです。そのため、「合わない部分をアドオンで修正して使う」よりも、グローバル企業の標準的な業務プロセスを実装したERPパッケージに自社の業務プロセスを合わせるべきという考えが正しいと言われています。しかしなかなかそうはならない理由の一つに、これらのパッケージソフトを提供する日本国内の販売代理店の存在があります。他の代理店との差別化を図るために、アドオンで付加価値を生み出している企業が多いのです。先述の通り私もアドオン開発を行ってきましたが、その開発費用がERPパッケージの購入費用の何倍にもなるという本末転倒なプロジェクトをいくつも見ました。

他者と差別化することと効率良く共通ソリューションを利用すること、どちらも非常に大事なことです。一方に偏るのではなく、うまくバランスをとる必要があります。現在流行の生成AIも複数のベンダーから提供されるようになりましたが、そのまま使っているだけでは他のユーザーとの差別化は難しいかもしれません。インサイトテクノロジーの製品にも生成AIを利用していますが、製品と組み合わせてファインチューニングを施すことで差別化を図っています。提供されている機能を積極的に活用する、でも独自機能もしっかり搭載してオリジナリティを出すという発想は、先ほどのERPシステムの例と似ているような気がしますね。

今年のdb tech showcaseでは、弊社のエンジニアが画像認識によって画像データ内の人の顔やクルマのナンバープレートをマスキングする技術についてセッションを行いました。Insight Maskingの次期バージョンに取り入れる予定の画像マスキング機能の検証を行ったものです。「増え続ける非構造化データ、その分類・整理やセキュリティ課題に対し、ChatGPT-4oはどこまで使えるのか?」というタイトルで、弊社の製品実装のプロセスを一部垣間見ることができます。アーカイブ動画の配信もありますので、ぜひチェックしてみてください。

db tech showcase 2024 Tokyoのアーカイブ動画配信は、以下のURLでご覧いただけます。
ぜひ会員登録をしてご視聴ください。

URL:https://www.db-tech-showcase.com/archive/

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