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株式会社NTTドコモ|国内トップレベルのセキュリティ要件を満たしたリアルタイム匿名化で、分析業務のリモート化を実現

顧客満足度向上のため、データ分析が急務となっていたNTTドコモ。特に課題だったのがチャットボットの自由記入欄のデータだ。ユーザーが個人情報を入力する場合があり、厳重な取り扱いが要求される。分析業務を進めるにはこれらの個人情報を徹底的かつ効率的にマスキングする必要があった。同社ではこの課題に対してインサイトテクノロジーの「Insight Masking」を導入し、「フリーテキストから個人情報を抽出し、リアルタイムにオンメモリでマスキングする」ことに挑戦した。導入の決め手となったのは、顧客視点に立脚したインサイトテクノロジーの迅速な開発と手厚いサポート体制だった。

インサイトテクノロジーはわれわれの要求を経営レベルで検討し、市場ニーズがあると判断して開発ロードマップを変更してくれました。これは顧客の声を聞くセールスと開発部隊、そして経営層が同じ目的意識をお持ちであり、その距離が近いことの証左だと思います。

情報システム部 経営基盤担当 担当課長
石山 省吾

大抵のITベンダーは「これはどういうことですか?」と聞くと「仕様です」と答えます。しかしインサイトテクノロジーの場合は、開発途中の課題を受け止め、すぐに開発チームと連携して解決策を提示し、「改修するので少しお待ちください」と言ってくれる。こんなITベンダーはほとんどありません。

情報システム部 経営基盤担当 主査
西本 竹靖

いちばんありがたかったのは担当営業の方の手厚いサポートです。短期間でも「開発ロードマップにはありませんがやります。開発チームを突きます(笑)」と言ってくださり、非常に頼りになりました。

情報システム部
大塚 彩乃

FAQ・チャットボットの入力データの
リアルタイム匿名化で分析業務のリモート化を図る

「つなごう。驚きを。幸せを。」をスローガンに、すべてのお客様により便利で快適な生活の提供を目指すNTTドコモ。BtoC領域においては「dカード」に代表される決済事業や「dtv」をはじめとするエンタメ事業など多種多様なサービスを提供している。

こうしたサービスにおいて重要になるのが、ユーザーとのコンタクトポイントだ。NTTドコモでは顧客向けFAQやチャットボット、ショップスタッフ向けマニュアルといった、顧客とのコミュニケーションをサポートするナレッジ基盤システムを構築している。ここから取得したデータは担当者が分析し、FAQなどのナレッジ改善に利用される。このナレッジ基盤システムを開発・運用しているのがNTTドコモの情報システム部だ。

ナレッジ改善にはデータ分析を含むPDCAサイクルを短期間で回し続ける必要がある。しかしNTTドコモでは思うように改善が進まない状況にあった。というのも、データ分析業務には毎日1時間程かかるうえ、データの取り扱いに出社が必須であるなど業務負荷が高い状態だったのだ。

データ分析対象のうちFAQやチャットボットの自由記入欄には、ユーザーが個人情報を入力する可能性がある。そのため、顧客情報の取り扱いに厳格なセキュリティルールを設けているNTTドコモでは、これらのデータは厳重に取り扱わねばならない。

分析業務効率化プロジェクトのリーダーを務めるNTTドコモ 情報システム部 経営基盤担当 主査の西本 竹靖氏は、「NTTドコモでは部外者の閲覧や持ち出しを防ぐため、お客様の個人情報は生体認証が必要な高セキュリティルームで扱います。FAQ・チャットボットの入力データはこれに当たるため、データ分析には出社が必須でした」と語る。

FAQ・チャットボットの入力内容は顧客の“生の声”だ。企業側はそれに対応し、また分析してサービスに反映させねばならない。しかし、そのためにはデータ分析の担当者は複雑な手順を経て高セキュリティルームに入室する必要がある。

情報システム部 経営基盤担当で担当課長を務める石山 省吾氏は、「作業負荷軽減と個人情報の保護を両立するには、『フリーテキストをリアルタイムでマスキングし、データのセキュリティレベルを下げる』しかないと考えました。ログ保存前に個人情報をマスキングすれば個人情報は残らないため、高セキュリティルーム外でもデータが利用できます」と説明する。

これをうけ、NTTドコモは2021年8月頃からマスキングツールの選定を始めた。求めたのは、自由入力欄のテキスト内容を瞬時に判読し、データベース格納前に個人情報をマスキングできる製品だ。しかし、製品の選定は困難を極めたという。

情報システム部の大塚 彩乃氏は、「データマスキングツールを提供するベンダーからは、色よい反応はありませんでした。そもそも『フリーテキストマスキング』という製品カテゴリ自体がなかったのですね。その中で唯一われわれの要件を満たしていたのが、インサイトテクノロジーの『Insight Masking』でした」と語る。

リアルタイムマスキングに立ちはだかった「性能」と「精度」

Insight MaskingはAIやユーザー指定のルールによって個人情報を自動検出してマスキングできる、日本語に最適化されたデータマスキングソフトウェアだ。

実はNTTドコモから問合せがあった2021年9月時点では、フリーテキストのマスキング機能は開発段階だった。大塚氏は「フリーテキスト内の個人情報をリアルタイムでマスキングしたいと相談したところ、『開発ロードマップを変更して対応します』とのお返事をいただきました。その姿勢に感銘を受け、すぐにお願いしました」と語る。

Insight Masking導入後、NTTドコモではさっそくリアルタイムマスキングの仕組みを構築した。FAQやチャットボットに入力されたデータはまずInsight Maskingサーバーに渡され、AIと事前設定のルールに基づいてマスキング箇所が検出される。マスキングはオンメモリで行われるため、個人情報を含まない状態でデータベースに保存される。データ分析には、このデータを使用することになる。

とはいえ最初からすべてがうまくいったわけではない。顧客へのレスポンススピードを維持しつつリアルタイムのマスキングを実現するには、克服すべき2つの大きな課題があった。その1つが「性能要件」だ。石山氏は「個人情報をマスキングするのはNTTドコモ側の都合なので、そのために顧客サービスのレベルを低下させてはなりません」と説明する。

NTTドコモでは0.1秒以下をレスポンスの指標とした。顧客に影響のない0.1秒以下でマスキングを実行できるリクエスト数とテキスト量を計測し、需要予測に応じてそれを実現する性能要件を決定、多数並列処理でアルゴリズムを実行してスピードを確保した。

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もう1つの課題は「精度の向上」だ。日本で最もセキュリティが厳しく「100点以外は認めない」(石山氏)というNTTドコモ。これまではテキストを目視でマスキングし、漏れがあれば都度その原因を追求してきた。求められたのは「人手と同等の精度」だ。基準を満たすため、Insight Maskingのチューニングが実施された。

西本氏は「入力されうる全パターンを洗い出し、網羅的な試験データを約500件用意しました。そのうえで定められたルール通りマスキングできているかを検証したのです」と説明する。

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石山氏は「このチューニング作業が最もチャレンジングでしたが、インサイトテクノロジーの開発チームはわれわれの課題を理解し、迅速かつ粘り強く最適なモデルにチューニングしてくれました」と語る。

こうした試行錯誤の結果、6か月かけて評価指標をすべて満たすことができたという。

2022年10月、NTTドコモはInsight Maskingの稼働を開始した。初めのうちは人間によるチェックも並行させたが、マスキング漏れは発生していない。Insight Masking導入の効果について西本氏は、「高セキュリティエリアでの作業が不要になり、分析業務を完全リモート化できました。効率が向上した結果、FAQの解決率も導入前より52ポイント上昇しました」と語る。

今後、NTTドコモではInsight Maskingを幅広く活用していく方針だ。石山氏は「高精度のフリーテキストマスキングの実現は、将来の戦略立案において重要な役割を果たします」とし、その未来像を以下のように展望する。

「生成AIを活用すれば、人間の恣意性や忖度を排除した定量的な判断ができます。その際、顧客データの安全性と迅速な分析が両立可能なツールの存在は、大きなアドバンテージです。インサイトテクノロジーと出会えたことは、NTTドコモにとっても糧となりました」(同氏)。

写真左:株式会社NTTドコモ 石山 省吾氏・写真右:株式会社インサイトテクノロジー取締役 CDO 高𫞎 則行

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